中国有色金属工業協会から、同協会加盟非鉄金属主要企業73社の2008年(1~11月)経営状況の報告がなされたので、 その詳細について紹介する。 (文中の為替レート:6.9603元/US$(IMFデータ、2008年1~11月平均値)) |
1. 主要企業の営業収入が著しく減少 2008年1~11月間の同協会加盟主要企業73社の営業収入は5,828.06億元(837億US$相当)で前年同期比0.64%増、伸び率は前年同期比34.3ポイント減、1~10月に比べ3.54ポイント減少した。その内訳は銅・ニッケル企業22社が2,800.46億元(402億US$相当)で前年同期比0.82%増、アルミ企業22社が1,903.82億元(274億US$相当)で前年同期比3.33%増、鉛・亜鉛企業15社が604.09億元(87億US$相当)で前年同期比15.02%減、タングステン・モリブデン・錫・アンチモンなどのレアメタル・レアアース企業14社が519.69億元(75億US$相当)で前年同期比13.01%増であった。 2008年1~11月間の同上73社の営業原価は5,172.17億元(743億US$相当)で前年同期比6.18%増、伸び率は前年同期比5.54ポイント上昇しており、非鉄金属企業の利益幅が一層縮小していることが判る(図1.参照)。
表1. 中国有色金属鉱業協会加盟・非鉄金属主要企業の財務実績(2008年1~11月) |
企業区分 |
金額単位 |
売上高※1 |
当期利益額 |
売上高利益率 |
コスト※2 |
利益コスト率 |
銅・ニッケル |
(億US$) |
402.3 |
17.9 |
4.44% |
384.9 |
4.64% |
(億元) |
2,800.5 |
124.29 |
2,678.66 |
アルミ |
(億US$) |
273.5 |
16.4 |
6.01% |
260.4 |
6.31% |
(億元) |
1,903.8 |
114.36 |
1,812.36 |
鉛・亜鉛 |
(億US$) |
86.8 |
2.9 |
3.29% |
85.6 |
3.34% |
(億元) |
604.09 |
19.9 |
595.81 |
レアメタル・ レアアース |
(億US$) |
74.7 |
10.1 |
13.55% |
63.4 |
15.96% |
(億元) |
519.69 |
70.43 |
441.29 |
合計 |
(億US$) |
837.3 |
47.3 |
5.64% |
794.2 |
5.95% |
(億元) |
5,828.1 |
328.98 |
5528.12 | |
〔為替レート(2008年1~11月平均:6.9603元/US$〕 ※1 売上高は主要営業収入である。 ※2 コストは推定値である。 |
図1. 2008年1~11月の重点企業の主要営業収入と主要営業原価伸び率の動向図
2. 主要企業は大幅減益が続き、11月度は大幅赤字に 2008年1~11月間の同協会加盟主要企業73社の純利益は、328.98億元(47億US$相当)で前年同期より48.69%減少し、11月度の赤字は41.47億元(596百万US$相当)で10月に比べ15.97億元(229百万US$相当)増加した。主要企業全体の内、50社(前月比3社増加)が赤字を計上している(図2.参照)。
2-1. 銅・ニッケル企業 22社の純利益は124.29億元(1,786百万US$相当)で前年同期比39.65%減、11月の下げ率は1~10月に比べ20.17ポイント拡大した。銅・ニッケル企業22社中、15社(前月比2社増加)の利益が減少した。11月度は銅・ニッケル企業22社の内、16社が赤字計上となり純利益計は17.15億元(246百万US$相当)の赤字となった。
2-2. アルミ企業 22社の純利益は114.36億元(1,643百万US$相当)で前年同期比56.52%の減少となり、11月の下げ率は1~10月に比べ8.14ポイント拡大した。アルミ企業22社中、19社(前月比2社増加)の利益がやや減少した。11月度のアルミ企業22社の内、12社が赤字計上となり、純利益計は12.79億元(184百万US$相当)の赤字となった。
2-3. 鉛・亜鉛企業 15社の純利益は19.90億元(286百万US$相当)で前年同期比76.50%減、11月の下げ率は1~10月に比べ7.99ポイント拡大した。鉛・亜鉛企業15社中、13社の純利益がやや減少した。 11月度の鉛・亜鉛企業15社の内、13社の赤字計上により純利益計は7.23億元(104百万US$相当)の赤字となった。
2-4. レアメタル・レアアース企業 タングステン・モリブデン・錫・アンチモンなどのレアメタル・レアアース企業14社の純利益は70.43億元(1,012百万US$相当)で前年同期比19.55%減、11月の下げ率は1~10月に比べ16.33ポイント拡大した。その14社(前月比2社増加)中、11社が減益となった。11月度の同14社の内、9社の赤字計上により純利益計は4.30億元(62百万US$相当)の赤字となった。
図2. 2007年1~11月と2008年1~11月の主要企業の鉱種別純利益総額の比較
3. 主要企業のうち赤字企業の欠損額が引続き上昇 2008年1~11月、同協会加盟主要企業73社の内、13社が赤字を計上し、赤字企業の割合は17.8%となった。赤字企業数は前年同期よりも8社増え、13社となり、その欠損額は22.05億元(3億US$相当)で前年同期の8.39倍に増加している。 赤字となった銅・ニッケル企業3社の欠損額は2.65億元(38百万US$相当)で前年同期比-186.79%であった。 赤字計上のアルミ企業5社の欠損額は5.62億元(81百万US$相当)で、前年同期の3.5倍に大幅増となった。 赤字計上の鉛・亜鉛企業4社の欠損額は13.44億元(193百万US$相当)で、前年同期の76.27倍と大幅増になった。 赤字計上のレアメタル・レアアース企業の欠損額は33.31百万元(4.8百万US$相当)だった。
4. 売上高利益率と利益コスト率のいずれも減少傾向 2008年1~11月の同協会加盟主要企業73社の売上高利益率は5.64%で、前年同期比49.02%の減少となった。その内、銅・ニッケル企業22社の売上高利益率は4.44%で前年同期比40.14%減、アルミ企業22社の売上高利益率は6.01%で前年同期比57.92%減、鉛・亜鉛企業15社の売上高利益率は3.29%で前年同期比72.34%減、タングステン・モリブデン・錫・アンチモンなどのレアメタル・レアアース企業14社の売上高利益率は13.55%で前年同期比28.81%減であった。 2008年1~11月の同協会加盟の主要企業の利益コスト率は5.95%で、前年同期比51.77%の減少であった。その内、銅・ニッケル企業22社の利益コスト率は4.64%で前年同期比41.53%減、アルミ企業22社の利益コスト率は6.31%で前年同期比61.84%減、鉛・亜鉛企業15社の利益コスト率は3.34%で前年同期比74.55%と大幅減、タングステン・モリブデン・錫・アンチモンなどのレアメタル・レアアース企業14社の利益コスト率は15.96%で前年同期比33.35%の減少であった。
5. 主要企業の流動資産回転率が下がり続ける 2008年1~11月の協会加盟主要企業73社の流動資産回転率は180.66%で、前年同期比19.62%低減した。その内、銅・ニッケル企業22社の流動資産回転率は285.23%で前年同期比18.87%減、アルミ企業22社の流動資産回転率は134.96%で前年同期比21.22%減、鉛・亜鉛企業15社の流動資産回転率は159.14%で前年同期比12.31%減、タングステン・モリブデン・錫・アンチモンなどのレアメタル・レアアース企業14社の流動資産回転率は114.49%で前年同期比20.51%増であった。
6. 主要企業の経済効益における新たな特徴及び利益減少の主な原因についての分析
- (1)主要企業の営業収入の伸び率が下がり続け、前年同期比の伸び率は34.94%から0.64%まで下がった。利益も継続的な減少局面にあり、特に11月度は50社の主要連企業が大幅赤字を計上し、欠損額が10月よりも15.97億元(229百万US$相当)増えている。
- (2)世界金融危機の影響が深刻化するに伴い、国内外市場の非鉄金属価格が下落している。特に10月には国内外市場の銅・アルミ・鉛・亜鉛・ニッケルなどの主要非鉄金属価格が暴落し、アルミ・亜鉛価格は既にコスト割れとなり、銅・ニッケル価格も損益分岐点に接近している。
- (3)国内外の非鉄金属価格の下落に伴い、企業の在庫が増加し、一部企業で次々に減産・操業停止に踏み切っている。
7. 終わりに 世界的な金融危機の影響を受け、2008年9月後半以降、金属価格の下落が顕著となり、需要は萎縮し、中国の非鉄金属企業も深刻な赤字に陥っている。2008年1~11月間の中国有色金属工業協会加盟の主要企業73社の営業収入は著しく落込み、利益が大幅な縮小局面に入り、11月には主要企業50社で赤字が生じ、赤字となった企業の割合は68%に上った。 これらの経営状況を鑑み、国務院は2009年2月25日に次の4項目からなる非鉄金属産業支援策を発表した。
- [1]国内非鉄金属企業のM&Aを推進し、最終的には非鉄金属企業を3~5社にする。
- [2]輸出入政策では、銅及びアルミの高付加価値加工品の輸出増値税還付率を5%から13%に引き上げ、銅精鉱の輸入税を輸入者に還付する。
- [3]過剰な生産設備(アルミ:80万t、銅:30万t、鉛・亜鉛:40万t)を2011年までに淘汰し、非鉄金属産業の技術革新を支援するため政府が助成する。
- [4]非鉄金属産業界のために国家備蓄制度のスキーム作りを行う。
今後の中国政府の非鉄金属産業への支援策の具体化が注目される。 |